ミリ波センサとは|BuhinDana

ミリ波センサとは|BuhinDana

ミリ波センサとは、ミリ波と呼ばれる電波を利用して対象物の距離、速度、角度などを高精度に検出するセンサー技術です。このミリ波センシング技術は、近年様々な分野で活用されており、特に自動車の自動運転や先進運転支援システム(ADAS)において重要な役割を担っています。

ミリ波とは何か

ミリ波とは、電磁波の一種で、その周波数帯は30GHzから300GHzの範囲にあり、波長にすると1mmから10mm程度の長さになります。この波長がミリメートル単位であることから、「ミリ波」と呼ばれています。ミリ波は電波の中でも周波数が非常に高く、光に近い性質を持っているのが特徴です。その特性から、直進性が非常に強いという性質を持ち、情報伝達容量が大きい一方で、雨や霧による減衰の影響を受けやすいという側面もあります。近年では、次世代移動通信システムである5Gへの活用でも注目されています。

ミリ波センサは IDEC ALPS Technolojies 株式会社 (IAT)
 IATのミリ波レーダーセンサーは|BuhinDana 
 

ミリ波センサの仕組みと原理

ミリ波センサの仕組みは、ミリ波を対象物に向けて送信し、対象物で反射して戻ってきた電波を受信するという原理に基づいています。この反射波を受信センサーが捉え、送信時との時間差や周波数の変化を解析することで、対象物までの距離や速度、角度といった情報を算出します。このプロセスは「やまびこ」に例えられることもあります。一般的に、ミリ波レーダーシステムは、ミリ波信号を生成するシンセサイザ、電波を送信するTXアンテナ、反射波を受信するRXアンテナ、そして信号処理を行うDSPなどの部品で構成されています。距離の測定には、電波の往復にかかる時間を計測するTOF(TimeofFlight)と呼ばれる手法や、周波数の変化を利用するFMCW(周波数変調連続波)方式などが用いられます。FMCW方式は、距離と同時に相対速度も測定できるという特徴があります。

ミリ波センサは IDEC ALPS Technolojies 株式会社 (IAT)
 IATのミリ波レーダーセンサーは|BuhinDana 
 

ミリ波センサの特性

ミリ波センサにはいくつかの優れた特性があります。これらの特徴により、様々なアプリケーションでの活用が進んでいます。

優れた耐環境性

ミリ波センサの大きな特徴の一つは、優れた耐環境性です。ミリ波は電波を使用するため、カメラなどのように光の影響を受けません。これにより、雨や雪、霧といった悪天候下や、夜間、逆光、トンネルの出入り口のような急激な照度変化がある環境でも、安定した検知性能を発揮することができます。特に自動車分野においては、天候に左右されずに前方の車両や障害物を検知できることが、安全性の向上に不可欠であり、ミリ波センサーが広く採用される理由となっています。

高精度な検知能力

ミリ波センサは、その短い波長を利用して高い精度で対象物を検知することが可能です。理論上は、最小で0.1mm単位の動きを検出できる高い分解能を持つとされています。これにより、対象物までの距離やその動きを非常に正確に捉えることができます。長距離の測定も可能であり、長距離かつ高精度な検知が求められる自動車の車載監視レーダーなどの技術において、その特徴が活かされています。

小型化の可能性

ミリ波は波長が短いため、ミリ波センサに用いられるアンテナや回路設計を小型化することが可能です。これにより、センサーモジュールの省スペース化を実現できます。この小型化の利点は、これまで高精度のセンサー搭載が難しかった様々な製品へのミリ波センサの搭載を可能にし、その汎用性を高めています。ドローンやロボットなど、サイズや重量に制約があるアプリケーションにおいても、小型のミリ波センサーは有効な選択肢となります。

ミリ波センサは IDEC ALPS Technolojies 株式会社 (IAT)
 IATのミリ波レーダーセンサーは|BuhinDana
  

ミリ波センサの活用事例

ミリ波センシング技術は、その優れた特性から多岐にわたる分野で用途が広がっています。ここでは、いくつかの具体的な活用事例をご紹介します。

自動車分野での利用

自動車分野では、ミリ波センサは先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術に不可欠なセンサーとして広く普及しています。主に、前方車両との距離や速度を測定し、衝突被害軽減ブレーキやアダプティブ・クルーズ・コントロールなどに利用されます。また、後側方の車両検知や駐車支援システムにも用途が広がっています。雨や霧などの悪天候下でも安定した性能を発揮するというミリ波センサの特徴が、自動車の安全性を高める上で重要な役割を果たしています。

ドローンやロボットへの応用

ミリ波センサは、ドローンや産業用ロボットの分野でも活用が進んでいます。ドローンに搭載することで、飛行中の障害物との距離や速度を正確に把握し、衝突回避や安全なナビゲーションを支援します。小型軽量化が可能なミリ波センサーは、ドローンの機体設計にも有利です。ロボットにおいては、周囲の環境を認識し、人や障害物を避けながら自律的に移動するために利用されたり、特定のメーカーのセンサーでは人の微細な動きを捉え、ジェスチャーによる操作に応用されたりすることもあります。

その他の利用例

自動車やドローン以外にも、ミリ波センサの用途は広がっています。例えば、交通量モニタリングシステムにミリ波センサを組み込むことで、車両の交通量を正確に計測し、道路状況の把握に役立てられています。また、工場や倉庫内でのAGV(無人搬送車)の衝突防止や、建設機械の安全機能にも利用されています。さらに、非接触での生体情報のモニタリングにも応用されており、医療・ヘルスケア分野での見守りセンサーやバイタルデータ収集への活用が期待されています。京セラのミリ波センシング技術のように、心臓の鼓動を非接触で計測できるといった独自の技術も開発されています。その他、建物のたわみ検知による予防保全や、不法投棄監視システム、さらには入浴時間の最適化といった個人向けの用途まで、ミリ波センサの活用範囲は拡大しています。メーカー各社が様々な特徴を持つセンサーを開発しており、idecなども産業用途向けにセンサーを提供しています。

ミリ波センサは IDEC ALPS Technolojies 株式会社 (IAT)
 IATのミリ波レーダーセンサーは|BuhinDana